アナログビジネスにも「残存者利益」

投稿者:nakajima 投稿日時:日, 2017-03-05 08:21

 運輸大手、ヤマトロジスティクスの新サービスの発表が目を引いた。ビジネスはデジタルにばかり注目しがちだが、アナログのデータも混在するのが現状だ。取り残されたアナログ資料にもビジネスチャンスありである。ちょっとニュアンスは違うが「残存者利益」という言葉がちょっと頭をかすめる。
 ヤマトの新サービスは医療機関向けの「カルテ保管サービス」である。内容は単純明快。「中小規模の医療機関や廃院予定の医療機関が所有するカルテ原本を、最大10年まで専用倉庫に保管する」というものである。特徴的なのが「紙の診療録とX線写真」だけで、電子データは扱わない。
医療機関で保管カルテが緊急で必要になった場合は、整理保管してある資料の中から、対象のカルテを探し出し、原本を保管用の箱単位で医療機関に届ける。要求があれば、電子ファイルでの送信も行うという。保管倉庫は、データセンターなどと同様に入室時の指紋認証による入室者確認や監視カメラなどでの映像記録などを使用して厳重に管理する。
医療関係の「情報関連サービス」というと、「電子カルテ」だの「レセプトの電子化」、カルテ情報をビッグデータ化して新しい診断技術や治療法に役立てるなどと最先端分野が話題になるが、「一周遅れ」と思われるのアナログ情報の処理もまた社会的需要が残っている。
 ただし、ヤマトにはこのサービス事業の下地がある。「機密文書リサイクルサービス」である。オフィスから荷物を回収する仕組みを利用して、機密文書類をオフィスから安全に回収、処理するサービスである。保管期間まで専用書庫で厳重に保管する。保管期間後は確実に廃棄処分する。
 医療機関向けの新サービスはこの「機密文書リサイクルサービス」を利用したものだが、医療カルテの取り扱いは、医師法などの法律や関係法令があるので、既存サービスと同じ仕組みで問題にならないか、検討が必要だった。現行規制が経済成長を阻害するのを減らすため、「産業競争力強化法」ではグレーゾーン解消制度があるが、この制度を使って経済産業省や厚生労働者に照会し、問題がないことを確認したという。
 カルテは、保管期限到来後は厚生労働省のガイドラインに沿って未開封のまま溶解処理工場で処分し、溶解完了証明書を発行する。
 かつて大流行したボウリング場も、ブームが去ると設備過剰で大赤字を抱えて次々と閉鎖されたが、その後、数少ない残されたボウリング場は、多くはないが、根強いファンに支えられて「残存者利益」を享受しているようだ。半導体でも、高密度化が進行して、設備は微細加工ができる高規格の工場へとどんどん移って行ったが、投資資金を手当てできず、古い設備が残されていた企業には、思いがけず、古い機械を大切に使うユーザーからの需要が長く続き、結果として市場を独占し、収益力のある「残存者利益」を享受した例もみた。
 ビジネスはどこに発生するか分からない。いつもあちらこちらに目を配ることが必要だろう。デジタル時代こそ、アナログにチャンスがあるかもしれない。